ウイルス性肝炎とは?種類と原因(感染経路)
ウイルス性肝炎とは、A,B,C,D,E型等の肝炎ウイルスに感染することで発症します。
突然炎症が起き、数週間続く場合が多いとされています。
症状があらわれない場合もありますが、風邪に似た症状が出たり、喫煙者はたばこを不味く感じたりすることがあります。ウイルスの型によっては肝機能が低下する肝不全を起こし、命に関わることもある疾患です。
急性ウイルス性肝炎は3~8週間程で機能は回復するため、特別な治療は不要です。
また、ウイルスに感染しているのに無症状(=キャリア)の場合は、ウイルスを他人に感染させる可能性があるので、検査・診療を受ける必要性があります。
A型肝炎ウイルス(HAV)
A型肝炎ウイルスは、主に便から排出されたウイルスが、手や水、食品を介して口に入ることで感染する経口感染によって感染します。
A型肝炎ウイルスの主な症状は発熱、全身の倦怠感や筋肉痛、食欲不振、吐き気・嘔吐、頭痛、腹痛などがあげられます。
また、無症状または症状が軽いこともあるため、感染に気づかない方もいらっしゃいます。
B型肝炎ウイルス(HBV)
B型肝炎ウイルスは、 血液または体液を介して感染します。感染経路は主に、ウイルスに感染している母親から、生まれた子供への感染(母子感染)と、それ以外の輸血や性行為による感染(水平感染)があります。感染様式は、「一過性感染」と「持続感染」の2つに大別されます。一過性感染では、 急性肝炎を発症する場合と自覚症状がないまま治癒する場合に分かれます。
一方で持続感染とは、ウイルスが体から排除されず、6ヵ月以上にわたって肝臓に炎症を起こします。適切な治療が行われない場合、慢性肝炎は肝硬変へ、さらには肝臓がんへと進行していきます。
C型肝炎ウイルス(HCV)
C型肝炎ウイルスの感染経路は血液感染です。日常生活の中で直接血液に触れることはそれほど多くありませんが、過去に輸血や血液製剤を使用した経験があったり、感染者との性交渉、刺青や覚せい剤などの使用、確率は少ないですが出産時の母子感染などが契機となります。
C型肝炎はほぼ慢性肝炎の経過をたどるため、急性肝炎の様な強烈な自覚症状はなく、進行が気づかれないケースが多く、徐々に慢性化するため高率に肝硬変や肝臓がんに進行していきます。そのため早期発見・早期治療が重要となります。
D型肝炎ウイルス
D型肝炎ウイルスは、単独では増殖できず、増殖にはB型肝炎ウイルスが必要です。同時感染では急性肝炎が重篤化しやすいので注意が必要です。
ただD型肝炎ウイルスは日本での発症はほとんどなく、南ヨーロッパを中心に欧米諸国で多くみられる疾患です。
E型肝炎ウイルス
E型肝炎ウイルスは、海外では流行地域の動物の糞に汚染されたものを経口摂取することで感染する例が多いですが、日本でも発症は散見されます。イノシシやシカなどの肉の加熱不足や豚レバーの生食といった感染が多く報告されています。ほとんどは急性肝炎として発症し、一過性に経過して治癒します。一般的には予後良好ですが、妊婦に感染すると重症化しやすいと言われています。
ウイルス性肝炎の症状と潜伏期間
※横にスクロールできます。
A型肝炎 | B型肝炎 | C型肝炎 | D型肝炎 | E型肝炎 | |
---|---|---|---|---|---|
潜伏期間 | 15~50日 | 30~180日 | 15~180日 | 30~180日 | 15~50日 |
慢性化※ | × | 〇 | 〇 | 〇 | × |
ワクチン | 〇 | 〇 | × | × | × |
※慢性化:肝臓の炎症が6か月以上続いていること
A型肝炎
ウイルスに感染してから2~6週間後に発病します。自覚症状としては、発熱、全身の倦怠感、吐き気や嘔吐、腹痛、食欲低下などがあげられます。
衛生状態のよくない地域に旅行してA型肝炎ウイルスに感染する方もいらっしゃいます。
A型肝炎は予防接種により、未然に防ぐことが可能な病気です。感染するリスクのある地域へ行く方は、事前にワクチンを打つようにしましょう。
B型肝炎
B型肝炎ウイルスは、感染しても症状が出ない場合もありますが、多くの場合はウイルス感染後1~6ヵ月後に発病します。
症状としては、全身の倦怠感からはじまり、食欲不振や嘔吐、黄疸、尿の色が濃くなるなどが挙げられます。また、胆汁の流れが滞ることで、全身の痒みや、便の異常を引き起こす“胆汁うっ滞”が起こることがあります。
しばらくすると黄疸の症状は悪化しますが、一方で食欲不振や嘔吐などの初期症状はほぼ無くなるため、回復したように感じます。黄疸は2週間ほどでピークに達し、数週間かけて消えていきます。
ごく稀に肝不全を伴う「劇症肝炎」を生じることがあります。「劇症肝炎」の進行は早く、肝臓機能が低下してしまい、血液を固めるための凝固因子が作れなくなってしまいます。また、体にとって有害な物質が、血液を介して脳に到達すると、「肝性脳症」を引き起こし重篤になれば昏睡状態に陥るなど命に関わる危険があります。特に成人は死亡リスクが高くなります。B型肝炎は予防接種もありますので、ワクチン接種を受けることが推奨いたします。
C型肝炎
C型肝炎ウイルスに感染すると約70%の方が症状のない持続感染者となり、慢性肝炎・肝硬変・肝臓がんと進行していく可能性があります。 慢性肝炎の患者さんのうち、約40%の方が20年以上の長い経過で「肝硬変」に進行します。
肝硬変になると年に7%の頻度で肝臓がんの発生が起こると言われます。肝硬変になると初期は肝臓の働きが保たれて合併症に乏しい「代償性肝硬変」と言われる状態ですが、進行していくと肝臓の機能が低下し様々な合併症・症状を伴う「非代償性肝硬変」になります。
C型肝炎ウイルスは急性の症状をほとんど起こさないため、気づかずに病状が進行するケースが多く、「非代償性肝硬変」まで進行して初めて症状が出ることもあります。初めは何となくだるい、疲れやすい、食欲がない程度の症状ですが、病状が進行し、肝硬変や肝臓がんまで進むと、黄疸、体重減少、腹水、肝性脳症などの自覚症状がでてきます。
ただ症状が必ず出るわけではないので、健診などの際に肝硬変、肝臓がんが見つかるケースも散見されます。
E型肝炎
E型肝炎はA型肝炎と同じく、急性肝炎として発症します。潜伏期間は3~8週間程度であり肝機能障害、発熱、吐き気、腹痛、黄疸、肝腫大などの急性肝炎症状が出ます。一般的には予後は良好です。
ウイルス性肝炎の検査方法・治療方法
検査方法
肝炎ウイルス検査は国が定めた制度によって、地方自治体で検査を受けることが可能です。
- 健康増進法に基づく健康増進事業による肝炎ウイルス検査
- 特定感染症検査等事業による保健所等における肝炎ウイルス検査
企業健診で肝炎ウイルス検査を受けられる場合もあります。
また、出産・手術前等の検査の1つとして、肝炎ウイルス検査を実施している医療機関もあります。
治療方法
A型肝炎ウイルス(HAV)
食欲不振などの症状がみられる方にはお薬を投与する場合もありますが、慢性化することがないため、自然治癒します。
B型肝炎ウイルス(HBV)
薬物療法によってウイルスの活動を抑えます。現在の治療法では、ウイルスを完全に排除することは困難とされています。治療によって肝臓への障害を未然に防ぎ、肝硬変や肝がんなどの重い疾患へ進行させないことが重要です。
C型肝炎ウイルス(HCV)
C型肝炎ウイルスは、薬物療法によってウイルス排除します。
C型肝炎ウイルスの治療薬は急速に進歩しており、ウイルスの完全な排除が治療の目標とされます。
E型肝炎ウイルス
A型肝炎と同様に、慢性化することはなく、ほとんどが自然治癒します。
患者さまが食欲不振などを訴えた場合、それに対するお薬の投与を行うことがあります。
ウイルス性肝炎はうつります!感染を防ぐための予防法
A型・B型肝炎にはワクチンがありますので、ワクチン投与による予防が可能です。
A型・E型肝炎は衛生状態の悪い水をそのまま摂取しないよう、しっかりと煮沸しましょう。また、疑わしい食料もしっかりと加熱するようにしましょう。
B型・C型肝炎ウイルスは体液や血液を介して他者へ感染することがあるため、性交渉の際のコンドーム着用、感染者との歯ブラシなどの共用はしない、他人の血液に直接触れないなど徹底した対策をしましょう。
感染者が妊娠した場合は、子供を感染から守るために出産時にワクチンや免疫グロブリン製剤を使用し、生まれてくる子の感染を防ぐことができます。