右上腹部にある胆のうは、肝臓で作られた胆汁を貯めておく役割を担います。
この胆汁には脂肪などを消化分解する働きがあり、胆管(肝臓から十二指腸まで通る管)を通り、胆のうで濃縮されて一時的に蓄えられます。
胆のうと胆管で、胆汁の成分が結晶化したものを胆石といいます。
胆石ができる「胆石症」とは?できる場所は3種類ある?
胆石症とは、胆のうや胆管にできた胆石(胆汁の成分が結晶化したもの)が原因となり、痛みや発熱など様々な症状を引き起こす病気の総称です。
胆石は、胆のう結石、総胆管結石、肝内結石と大きく3種類に分けられます。
最も多く見られるのは胆のう結石で、次いで総胆管結石、肝内結石は稀な結石です。
①胆嚢結石
胆のうの中にできる結石の中で、最も多くみられるのがコレステロール結石です。胆のうの収縮によって移動してきた胆石が、出口で詰まると、みぞおち付近の上腹部に激しい腹痛(=胆石発作)が起こります。
脂肪分を多く摂取した後などは特に、胆石発作が起こりやすくなります。また、胆石が詰まった状態が続くと細菌感染が起こり、急性胆のう炎を発症します。
急性胆のう炎は、発熱や腹痛、黄疸などの症状がみられます。
②総胆管結石
胆管にできる結石の多くは、“胆のうから出ている管”と“肝臓から出ている肝管”が合流した「総胆管」に、胆石が落下したものです。
結石が、総胆管から十二指腸への出口に詰まると、みぞおち付近の上腹部に強い痛みがあらわれます。発熱や黄疸を伴うこともあります。
総胆管結石は、急性胆管炎や、急性膵炎を引き起こすこともあります。
③肝内結石
肝内結石は、肝臓内にある胆管にできる結石です。それほど多くはみられない稀な結石です。
無症状の場合もありますが、腹痛や発熱の症状が出ことが多く、「肝内胆管がん」のリスクも高いとされています。
胆石ができる原因
胆石ができる原因は明確にはわかっていませんが、考えられる原因としては、以下のようなものがあります。
- 肥満、ストレス、不規則な食事、過食などの生活習慣
- 胆汁を十二指腸へ押し出す役目を担う「胆のう」が正常に働かず、胆汁がうっ滞してしまっている
- 胆汁の成分(コレステロール、ビリルビン、胆汁酸など)バランスが崩れている
- 過剰なコレステロールの増加により、胆汁で溶けきれず結晶化している
- 「ビリルビン」が上昇する肝硬変や胆道感染などが起こっている
※ビリルビン:全身に酸素を運ぶ役目を終えた赤血球が破壊された際にできる成分
近年、日本人の成人10人に1人が胆石をもっているとされ、胆石症の患者さまは年々増加傾向にあります。
胆石症の患者数が増加した原因としては、下記2つが挙げられます。
① 食生活の欧米化
高脂肪な食事で脂肪の摂取量が増えたことで胆石ができやすくなった
② 医療の進歩
診断技術の進歩で小さな胆石や無症状のものまで発見しやすくなった
こんな人は要注意!
- 太り気味
- 運動不足が続いている
- 頻繁にダイエットをしている
- 脂っこい食べ物が好き
- 野菜や青魚をあまり食べない
- 食事を抜いたりドカ食いしたり不規則な食事をする
- 寝る直前に食事を摂ることがある
- 40歳以上の女性
※胆石をもっている人は、40代以降の女性に多く、発症率は男性の約2倍といわれています。
胆石症の症状は?どこが痛い?
胆石症を患っている方の2~3割は、無症状胆石とよばれ、ほとんど症状がみられません。しかし、半数以上の方には何らかの症状がみられます。
胆道痛
胆道痛は、右の肋骨の下の部分やみぞおちの痛みとして出る傾向があり、右肩に放散する痛みを感じることがあります。この痛みは食後に出ることが多いのも特徴としてあげられます。
高熱
胆石が原因で胆のうや胆管が炎症を起こし、高熱の症状がみられる場合があります。
胆のうから胆管への胆汁の流れが胆石によってせき止められることで、胆汁の成分が胆のうの粘膜を傷つけ、さらに細菌の感染が加わることで炎症が起こります。
黄疸症状
皮膚や白目部分が黄色くなる「黄疸症状」がみられる場合もあります。
肝臓で作られた胆汁は便に混じって排泄されますが、胆石などによりその流れがせき止められて、十二指腸に排泄されずに血液中に流れることで黄疸になります。黄疸になると皮膚がかゆくなったり、ビリルビン尿という褐色〜黒色の尿が出たりします。
胆石が起こす病気のリスク
胆石は必ずしも症状がでるとは限らないため、無症状の場合は日常生活に支障をきたすほどには至りません。実際、胆石をもった多くの方が、意識することなく生活できています。
しかし、時には「胆石発作」を起こして、みぞおちや右上腹部に強い痛みを感じる場合もあります。一時的な痛みだけで治ればよいですが、胆嚢炎や胆管炎を引き起こすリスクもあります。その場合、激しい腹痛や吐き気・嘔吐・発熱などの症状がでることも想定されます。
また、症状を放置して治療が遅れてしまうと、さらに深刻な状態(胆のう周囲膿瘍や胆のう穿孔、敗血症など)まで進行することもあります。なかでも「急性閉塞性化膿性胆管炎」は、救急医療体制の整備が進んだ現代であっても命を落とすことのある怖い疾患です。
たとえ痛みがない場合でも、検診や人間ドックなどで胆石を見つけたら、定期的に検査を受けて経過観察するようにしましょう。
胆石の検査方法と治療法
検査方法
腹部超音波検査
腹部エコーは、胆石に対して最も選択される検査法です。胆のう結石はほぼ100%発見でき、総胆管結石も約90%の確率で見つけることができます。
超音波検査はゼリーをつけたプローブ(探触子)を腹部に当てるだけなので、苦痛を伴いません。被曝などの心配も入らないため、安心して検査を受けていただけます。
血液検査
超音波検査では、胆のう結石以外の胆石は見つけられないこともあります。
血液検査も併用することで、その他の病変をはじめ、炎症や黄疸の症状を確認することができます。
胆石症の治療方法
痛みなどの症状がない胆石症は治療をせずに、経過を見ていただいて問題ありません。
しかし、胆のう結石は腹痛などの症状がみられることが多く、手術による治療が検討されます。
胆石の手術では胆のうごと取り出されます。胆石だけを取り除いても、再発する可能性が高いためです。
以前は開腹手術によって治療されましたが、現在では腹腔鏡下胆のう摘出術による手術が一般的となりました。
腹腔鏡下胆のう摘出術は傷口が小さく、患者さんへの負担も最小限にできます。術後も痛みが少なく、日常生活への早期復帰が期待できます。
しかし、腹腔鏡での手術が難しい場合は、開腹手術が選択されます。炎症などによる胆のうの癒着、あるいは胆のうがんの合併が疑われる場合は、直接手で触れながら治療できる開腹手術が望ましいです。
治療が必要な方
胆石によって、急性炎症や腹痛の症状がでた方には、治療を推奨いたします。
また同様に慢性炎症を起こし、慢性胆嚢炎による腹痛や消化不良などの症状が出ている方は治療が必要です。
胆石症や胆嚢炎はよくある病気とされますが、一度、専門の医療機関への受診をお勧めします。その他、悪性腫瘍との鑑別が難しい場合もありますので、定期的な検査はとても大切です。
急性胆管炎、急性胆嚢炎などの発症は、急性期に適切な対処が必須です。
重症感染症の場合は、最悪の場合、命を落とすこともあります。
胆石の予防に効果的な食事
胆石形成、胆石発作を未然に防ぐには、食生活の見直しが大切です。
避けた方が良い食事
- 過食・暴飲暴食
- コレステロールの多い食事:肉や魚の肝など
- 脂肪分の多い食事:肉の脂身、バターなど
- 糖分の多い食事:精製された砂糖など
積極的に食べた方が良い食事
- 食物繊維(水溶性):野菜・きのこ・海藻・豆類・果物など
コレステロールの吸収を抑える働きがあります。またコレステロールを含んだ胆汁を排泄させる効果が期待できますので、日々の食事に取り入れられるように工夫しましょう。 - ビタミンC:果物・野菜
- たんぱく質:肉・魚・大豆製品など
- 水分
栄養バランスの取れた食事・規則的な食生活を意識し、胆石を防ぐよう心掛けてみましょう。