増加する生活習慣病「脂肪肝」とは?
脂肪肝とは余分な糖質や脂質が中性脂肪に変わり、肝臓に中性脂肪が蓄積された(脂肪が肝臓全体の30%以上を占める)状態です。生活習慣の乱れ(食べ過ぎ、運動不足など)によって患う場合が多く、現代では男性の約40%が脂肪肝であるとされています。
日本人の中には、いわゆる肥満体型ではない見た目が痩せ型の方にも脂肪肝と診断される方がいらっしゃいます。痩せている人でも、肝臓に脂肪がたまる可能性は十分にあります。
脂肪肝の多くはメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を合併しており、放置すると肝臓の機能悪化や肝炎・肝硬変などの深刻な病気に進展します。また、生活習慣病の代表的な病気である脂質異常(高中性脂肪)や糖尿病を誘発して、動脈硬化を進行させるリスクが高まります。
脂肪肝が疑われる数値
- AST (GOT):基準値7~38 IU/L
- ALT (GPT):基準値4~44 IU/L
高値の場合、急性肝炎・劇症肝炎・慢性肝炎・アルコール性肝炎・脂肪肝・肝硬変・肝がんなどの病気が疑われます。 - γ-GTP:男性→80 IU/L以下、女性→30 IU/L以下
高値の場合、急性肝炎・慢性肝炎・肝硬変・肝がん・アルコール性肝障害・非アルコール性脂肪性肝炎・薬剤性肝障害・胆道系疾患などの病気が疑われます。
※上記の基準値は検査機関によって異なります。
脂肪肝の症状
肝臓は他の臓器と比較しても、症状がでにくい臓器であるとされています。
脂肪肝についても、際立った症状が出ないことが多いです。
しかし、脂肪肝が肝炎を誘発し、やがて肝硬変に進行することもありますので注意が必要です。
脂肪肝を患っている方は、生活習慣病やメタボリックシンドロームなどの合併症も疑われます。
脂肪肝によって血液がドロドロになり血流が悪くなるため、全身の細胞には酸素と栄養分が補給されにくくなります。肥満傾向にあり、倦怠感(だるい、疲れやすい)や頭がボーッとするなどの自覚症状がある方は注意が必要です。
特に生活習慣病は、狭心症や心筋梗塞など心疾患の合併を患う危険性が高い病気なので、早期に対処することが重要です。
脂肪肝の原因
脂肪肝は、生活習慣の乱れ(食べ過ぎ、飲みすぎ、運動不足など)によって患う方が多いとされています。日頃からカロリー過剰の食事(糖質や脂質を多く含む食事)を摂り過ぎると、皮下脂肪はもちろんのこと、内臓脂肪も蓄積されていきます。
肥満
脂肪がエネルギーに変換されるには、「インスリン」と呼ばれる物質が重要な役割を担います。しかし、肥満状態になるとインスリンが正常に機能しなくなり、肝臓に脂肪が溜まりやすい環境をつくってしまいます。
アルコールの過剰摂取
お酒の飲み過ぎは肝臓に中性脂肪をためる要因となるため注意が必要です。
アルコールが分解される時、肝細胞の中での脂肪の入れ替わりがうまくいかなくなり、中性脂肪が合成されやすくなります。
無理なダイエット
極端な食事制限をすると筋肉量が減少します。それによって基礎代謝が落ち、逆に肝臓に脂肪が溜まりやすい状況を作ってしまいます。(低栄養性脂肪肝)
脂肪肝が進行すると肝炎や肝硬変に…
脂肪肝は放置すると、脂肪性肝炎、肝硬変、肝がんへと進行する可能性があります。
アルコール性脂肪肝→「アルコール性脂肪性肝炎(ASH)」
過度の飲酒、アルコールの過剰摂取によって脂肪肝を患い、やがて肝臓に炎症が起こります。
このような肝炎を、アルコール性脂肪性肝炎(ASH:alcoholic steatohepatitis)といいます。
肝炎によって肝細胞が破壊されると、肝硬変や肝がんを誘発する可能性があるため、健診や人間ドックで「肝機能異常」を指摘された方は注意が必要です。
非アルコール性脂肪肝→「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」
日本人の脂肪肝の原因で最も多いとされているのは、食べ過ぎによる栄養過多が原因となるものです。
アルコールを飲まない方でも脂肪肝を患う可能性は十分にあり得ます。これを非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:non-alcooholic steatohepatitis)と呼びます。ASHと同様に、肝硬変や肝がんへと進行する場合があります。
脂肪肝の治療法と改善方法
脂肪肝は症状が現れにくいため、放置されることが多い病態の1つです。
しかし軽視して放っておくと、やがて肝炎や肝硬変、肝がんへと進行していきます。
まずは定期的な検査によって、ご自身の身体と向き合うことから始めましょう。
当院では、脂肪肝の要因を明確にすることからはじめます。
アルコールが原因となる脂肪肝は、禁酒が最も効果的な治療法です。
脂肪肝はほとんどの場合、生活習慣を見直すことで改善することができます。
食事は三食バランスよく、間食とお酒は控えめに
日々の生活の中で、栄養バランスのよい食事を心がけましょう。
食べ過ぎによって栄養過多となっている方は、カロリー制限も有効です。
主食・主菜・副菜をそろえる
バランスのとれた食事の基本形は
- 主食:1品
- 主菜(魚、肉、卵、大豆製品など):1品
- 副菜(野菜、きのこ、海藻類):2品
といわれています。
とくに主食や主菜の摂りすぎは、カロリーオーバーする可能性が高いです。
糖質を抑えながら、良質なたんぱく質を摂れるような工夫が大切です。
外食することが多い方は、主食・主菜・副菜でバランスがとれやすい定食(和食)がおすすめです。
糖分や脂肪分の多い食事はなるべく控える
糖質、脂質の過剰摂取は、肥満の原因となります。
とくに間食をとる習慣のある方は、注意が必要です。
なかでも砂糖は天敵です。果物をたくさん食べる方もいらっしゃいますが、摂りすぎは禁物です。
果糖も肝臓に脂肪をためやすく、肥満の要因となります。
食物繊維やビタミン類の多い食品を選択
低エネルギー食品である野菜や海藻・きのこ類などは、栄養価も高く身体の調子を整える働きがあります。
野菜類は血糖値の急激な上昇を抑え、食物繊維が豊富な食品は腸からの糖質や脂質の吸収を遅らせます。
食事の初めに優先的に摂取すると、食べ過ぎ防止にもつながり効果的です。
アルコールを控える
お酒はカロリーが高いだけではなく、「つまみ」が高カロリーとなるケースも多いです。
飲酒量や飲酒頻度を見直して、肝臓への負担を極力減らすことが大切です。
なお、主食の代わりにお酒を飲むという方もいらっしゃいますが、栄養バランスの偏りは肥満の原因となりますので注意が必要です。
適度な運動を心がける
おにぎり1つ(約120g)のカロリーは215kcalといわれています。
体重60kgの人が1時間ウォーキングした場合の消費カロリーは126kcalが目安です。
つまり、おにぎり1つ消化するには、1時間のウォーキングでは消費されないことがわかります。
摂取したエネルギーを運動で消費するのは、意外に大変です。
脂肪は筋肉によって燃焼されるため、まずは筋肉量を増やすことが脂肪肝の解消の近道です。
軽い筋トレは肝機能の改善につながり、深層筋(インナーマッスル)の強化は基礎代謝UPにより太りにくい体質をつくります。
無理のない範囲で適度な負荷をかけながら行う有酸素運動は、同じく体質改善に効果的です。ジョギングや水泳、サイクリングなどがおすすめです。