下痢の症状と種類
【注意】緊急性の高い症状
- 経験したことがないような激しい下痢
- 便に血が混ざっている
- 排便後も腹痛が続く
- 下痢のほかに吐き気・嘔吐・発熱がある
- 同じものを食べた人も同時に発症した
- 症状が悪化している
- 脱水症状が起きている(尿が少ない、口が異常に渇く)
下痢が続くことで、体内の脱水を引き起こす危険性があります。
下痢が続いてつらい、もしくは「いつ下痢を催すのか」という不安から、電車に乗れない、仕事や生活に支障をきたしている場合は消化器内科を受診しましょう。
とくに1週間以上症状が続いている方や、他の症状も併発している方は、早期診断が望まれます。
下痢で病院を受診するときは以下の点をチェックしておきましょう
- いつから下痢が始まったか
- 腹痛の有無と痛み方、またその程度
- 排便の頻度
- 便の状態
- 下痢以外の症状があるか
下痢には4種類のパターンがある
急性下痢
浸透圧性下痢
過度なアルコール摂取や脂質の多い食事が習慣化することによって起こる下痢です。
暴飲暴食による腸への負担、食べ過ぎ(栄養の過剰摂取)で腸の吸収機能を弱めるなどが原因となります。結果的に便中の水分が増えて、急性下痢の症状が起こります。
分泌性下痢
食中毒や食あたりなどによって軟便が出てくることがあります。これを分泌性下痢と言います。
腸粘膜に障害を起こしたことによって腸管内の分泌液が過剰となり下痢を誘発します。食物アレルギーや薬の影響で分泌性下痢になることもあります。
慢性下痢
蠕動運動性下痢
蠕動運動を行う消化器官の中で、腸は食物を肛門に向かって運ぶ役割を担います。
その際、ストレスなどが原因で蠕動運動が過剰に働き、十分に水分を吸収できないまま便として排出されるため、下痢の症状を引き起こします。
滲出性下痢
潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸に炎症があることによって起こる下痢症状を、滲出性下痢と言います。
腸の粘膜から血液成分や細胞内の液体が流れ出てしまうことによって、便の水分量が多くなります。また、炎症によって水分吸収能力が低下することも要因としてあげられます。
下痢になったときの食事や注意点
食事
消化の良い食品、調理方法を選びましょう
胃腸の調子が優れないときは、食事を控えたり、極力胃腸に負担をかけない食材・食品選びが重要です。
とくに、食物繊維や脂質の多い食品は消化器官に負担をかけます。食物繊維が少ない食品をなるべくやわらかく調理して、消化の良い食べ物を選択するように心がけてください。
脂っこい食品は、しばらく避けましょう。
<例>卵がゆ、煮込みうどん、鍋料理、湯豆腐、煮浸し、ひきわり納豆
胃酸の分泌を高める食品は避けましょう
嗜好品をはじめ、刺激の強いものは胃酸の分泌を高めてしまい、胃腸に負担をかけます。
体調が落ち着くまでは、それらの食品を避けるようにしてください。
<例>香辛料、甘味、塩味(漬物)、酸味(柑橘類)、嗜好飲料(アルコール、炭酸飲料、コーヒー、紅茶)
注意点
下痢になったときに注意するべきポイントは5つあります。
以下の点に気を付けて、悪化や他症状の併発を防ぐようにしましょう。
①水分・電解質を十分に補給する
下痢の症状が出ている際は、脱水症状や電解質異常を引き起こす場合があります。
水分・電解質の補給には、スポーツ飲料などがおすすめです。
逆に、脂肪分が多い牛乳は腸管を刺激してしまうため、避けるようにしてください。
②下痢止め薬という選択肢は要注意
市販の下痢止め薬は、食中毒や食あたりによる感染性の下痢においては、使用を避けましょう。
安易に下痢止め薬を服用してしまうと、有害菌が体外に排泄されず腸内にとどめさせてしまい、逆に状態を悪化させてしまいます。感染性の下痢が疑われる場合は、直ちに医療機関を受診してください。
③長く続く下痢は、必ず医療機関へ
慢性的な下痢症状は、他の疾患によって起こっている可能性が考えられます。
消化器内科を受診し、専門の医師の診断を受け、下痢の原因疾患を特定してもらうことが望ましいです。
④食事は胃腸に優しいものを選択
食材は、なるべく消化の良いものを選択してください。
やわらかく煮込で食べるなど、調理方法も工夫が必要です。
濃い味付けは胃腸に負担をかけるので、できるだけ薄味を心がけましょう。
柑橘類は腸管に刺激を与えるので、避けるようにしてください。
⑤脂質の多い食事、刺激の強い嗜好品は避ける
脂質や糖分を多く含む料理は、なるべく避けましょう。お菓子などの糖質を多く含む食べ物も腸管に負担をかけるので注意が必要です。
栄養バランスが良さそうな生野菜も、食物繊維を多く含み腸の運動を活発にしてしまうため、症状の悪化につながります。
また、アルコールや香辛料の効いた料理など、刺激物の過剰摂取は避けることが望ましいです。
下痢を引き起こす病気
感染性胃腸炎
感染性胃腸炎の代表的な病原体は、ノロウイルスです。激しい下痢と嘔吐に悩まされます。
下痢止め・吐き気止めなどの薬を飲みたくなる方も多いと思いますが、かえって症状を長引かせるリスクがありますので、ご自身の判断で服用しないようにしましょう。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
潰瘍性大腸炎は、下痢や血便の症状が併発します。
軽い発熱や、渋り腹といったスッキリしない排便も見られます。長期化すると大腸がんを合併することがあります。定期的な大腸内視鏡検査が必要です。
虚血性腸炎
虚血性腸炎とは、大腸に栄養を送る血管の血流が阻害されることで大腸の粘膜障害が起き、炎症によって粘膜のただれや潰瘍などが生じる病気です。虚血性腸炎の3大症状として、腹痛(左側腹部~下腹部)、下痢、血便の3つがあげられます。
過敏性腸症候群(IBS)
おなかの張りなどの便通異常が慢性的に(3か月以上)続いている場合、過敏性腸症候群が疑われます。
下痢と便秘の症状を繰り返すことが多く、精神的なストレスから発症する場合もあります。
慢性膵炎
慢性膵炎は進行すると、体重減少や下痢など痛み以外の症状も出てきます。膵臓からの消化酵素の分泌が低下することで、主に脂肪分の消化がうまくできなくなり、液状の白っぽい脂肪便がみられる場合があります。
当院で行う検査方法
大腸カメラ検査
下痢や下腹部の不快感などが続く場合は、原因となる疾患がないか、大腸カメラによる検査を行います。
当院では内視鏡専門医の院長による苦痛の少ない大腸カメラ検査で、早期発見・早期治療を目指します。
腹部エコー検査
下痢などの症状が慢性的に続く場合は、消化器系の病気が疑われます。
腹部エコー検査は肝臓、膵臓、胆嚢、腎臓の病気を調べるスクリーニング検査として有効です。
血液検査
血液検査によって、胃腸が炎症しているかどうかを調べることができます。